現地からのメッセージ


実践酪農学コース担当教員から

酪農後継者も出前講座を受講
ここ鹿追町には酪農学園大学出身の農業後継者や農協職員などが数多く存在し、地域活性化のために大いに活躍している。
昨年の春からは、同大学酪農学科の学生3人が「酪農実践学コース」で酪農家に農家実習に入り、3カ月にわたる長期研修を終了して無事帰学した。 この間、大学から多数の教授が来町し、学生に対する出前講座が開設された。この講座は、地元の酪農後継者も受講して大変勉強になったようだ。このように地域と大学がより現場でつながる取り組みは、双方にとって有意義であると考える。


農業技術は現場から生まれる
酪農学園大学と地域が結び付くことは、現場の農村地域がより新しい技術や発想をいち早く取り入れることができ、高度な技術的アドバイスを受けることも可能になる。その上、大学と地域での共同調査・研究が可能となり、地域農業の発展にも大いに貢献するものである。
ところで農業に限った場合、何者も現場の実態を無視することはできない。農業を実践している農業者が一番の先生である場合が多いからだ。私自身、JAマンとして長年農家へのアドバイスを仕事としてきたが、半分以上は農家から直接教えられたものである。農家や現場で結果を出して、初めて「農業技術」といえるのではないだろうか。
農業技術の多くは現場から生れている。誰のための学問で、誰が利用し、誰が結果を出すのかといえば、それはすべて農家であり、農場や畑の現場に答えがあ る。これらのことから、農業関係の大学は現地とより密接なかかわりを持つべきである。


「本当の農業」を知ることの意味
大学の研究室や顕微鏡の中で実証できても、現場の農家が使いやすく、分かりやすい技術になっていなければ実践はできない。良いことと分かっていても、実 践するための手間やコストによっては実践されないこともある。従って、その技術を利用しやすくするための手段や方法も併せて開発することが大事だ。
また、農業に学ぶ学生には、より農業の現場を理解した上で農学の勉強をしてもらいたい。机上だけの学問ではなく、現場で実践できる学問となるようお願いしたいものである。
酪農学園大学では、昨年から始まった「酪農実践学コース」の取り組みや、ゼミ研究での現地実態調査などを多く取り入れており、過去から比較すると現場を重視した取り組みが拡大しているように感じる。これは大変望ましい方向といえる。
「酪農実践学コース」で受け入れた3人の学生は、早朝からの農場作業を約3カ月間続けた。それだけでも収穫となるものが数多くあっただろうし、酪農の実態 も今まで以上に理解できたのではないだろうか。 「本当の農業」を知ることは、卒業後に農業者にならないまでも、農業に関連する仕事に就いた時に大いに生きてくるだろう。
農家戸数が徐々に減少し、農家の子弟も含めて農家 の良き理解者が減少する中で、少しでも農業の理解者を増やしていくことを、この「酪農実践学コース」に は期待している。


地域と大学の交流発展を期待する味
酪農学園大学酪農学科の干場信司教授のゼミに所属 する学生が、数年前から「酪農生産システムの総合評価」を課題として、鹿追町の実態調査と分析を行って くれた。これは単に経済性を求めるだけでなく、エネルギーや環境負荷の視点、さらには家畜の健康状態や 人間の満足度の視点から評価いただいたものだ。産業としての農業を考える時、経済性の追求に走りがちな傾向に対して一考を与えてくれて感謝している。
このように現地だけでは気が付かない方向性を示唆 してもらえるのも、大学との交流があってこそである。 今後とも数多くの機会を得て、鹿追町農業と酪農学園大学の交流が発展することを期待する。

酪農ジャーナル 2006.1月号より





酪農学園大学と浜中酪農との関わりは数多くの卒業 生を有していることもありますが酪農生産現場の調 査・研究・分析・実習などのフィールドとして活用し ていたこと。また、浜中町が 2005年には地域総合交流 協定を大学と締結したこと。そしてJAは第5期から 第7期のJA中期計画策定にあたり組合員調査及び分析、提言に協力をいただいています。
実践学に関しては 2005年の当初から声をかけていただき参加・受け入れを行っていますが江別から遠距離にあり学生や担当教授には他の地区以上に負担が大きく苦労の中で実施されているものと推察されます。 特に、当初は受け入れ農家やJAも対応の仕方が分からず、その都度関係者で集まって協議を行いました。 農家には講義のためとかではなく普段のありのままの酪農を知ってもらうことが一番大切であることが再認識させられました。
そのような中で酪農専業地帯として浜中の特徴や生産現場の基本を体験できればその後の講義と連動していくと考えられます。当JA内での研修は農家の敷地 内のトレーラーハウスでの生活となり農家の生活そのものに特化されます。隣も見えず原野の一軒家となり夜ともなれば音もなくなります。都会育ちの学生には別世界の存在をからだで体験できる貴重な?時間になると思います。
生活環境も含め、すべてが未体験ゾーンに入り、慣れるまでは大変なストレスを感じることとなります。 しかし実践学で体験することはその後の講義も通常以上に身になることが期待できると考えられます。酪農家の生産現場では知識を得てから牛を飼っているわけではなく経験と勘、先代からの手法で行われているこ とも多く、後で分析したら研究データに合致することもたくさんあります。酪農家は土壌、草地、乳牛、機械、経営と多岐に亘って合格点を得なければならず、 どれかの項目でも赤点があればたちまち経営にひずみが発生し立ち行かなくなります。実践学ではそのことを大いに学んでほしいものです。
実践学や関係大学の連携など教育・研究分野では更 なる進化を目指し、一歩前進した取り組みが行われております。学生、受け入れ農場、学校関係、地域の関係者が将来を見据え一体となって取り組みを始めたことは今後の発展に必ずつながることを期待したいと思 います。その結果、酪農生産現場の技術革新と経営改善に結びつくことができれば大きな成果となります。
「教育活動を疎かにして将来は期待できない」と言われます。実践学を通じて地元の後継者や関係者も講義 を受講させていただき非常に感謝しています。この事業の成果が表れるのはまだ先のことと思いますが酪農学園大学と10数年前から調査・研究を重ねて様々な面で成果が表れています。この実践学も関係者の負担も通常より大きいと思いますが、地道に積み重ねることにより結果が必ず、後から付いてくることを確信しています。





初めての地域総合交流協定
酪農学園大学・同短期大学部と浜中町は昨年2月24日、地域総合交流協定を締結した。酪農学園大学が地域と総合交流協定を結ぶのは初めてのようだが、浜中町にとっても同じく初めてのことであった。
同大学と本町とのつながりだが、浜中町には数多く の酪農学園大学卒業生を有していることもあるが、浜中酪農の調査・研究・分析・実習など酪農学部を中心 に多くの交流があったこと、また本町のエネルギービ ジョン策定時には学識経験者として教授派遣による計画策定のご支援をいただいている。
浜中町農協では、中長期計画策定時のアンケート調査や、その分析に基づく計画策定の協力などこれまでにも数多くの支援と交流が図られてきた。


多少戸惑いを感じた受け入れ農家
最初の交流事業として、酪農学園大学酪農学科の学生2人が本町の酪農家の下で実習する「実践酪農学コース」の受け入れが昨年からスタートした。
受け入れ農家は以前から実習生はもとより、新規就農を目的とした研修生の受け入れ経験はあったが、大学の授業科目の単位としての現地実習の受け入れには 多少の戸惑いを感じたと思われる。ただ、本町の優秀 な酪農家の中でも選定農家は経験も豊富なので、私と してはあまり心配していなかった。


人材および後継者育成に期待
本町としては、酪農学園大学との最初の交流事業となる「実践酪農学コース」の成果を楽しみにしており、 酪農学園大学の学生と地域青年との交流、そしてイベ ントへの積極参加などを通して交流活動がさらに活発化していくことを期待している。
また、大学による公開授業への参加、来町する教授 陣によるシンポジウムの開催など人材育成および後継者育成にも期待しているところだ。
その中で昨年8月、この交流協定に基づいて浜中町農協が「酪農経営に伴う畜舎排水の全戸調査」を酪農 学園大学酪農学部に委託した。
酪農経営に伴う家畜ふん尿対策では、「国営環境保全 型かんがい排水事業」を中心に各種制度事業をもって整備されている。しかし、搾乳施設の洗浄などで排出 される畜舎排水はこれまで関心も薄かったし、その対策も酪農家個々での対応で、河川への流入も懸念され ている。従って、同農協では全酪農家を対象に実態調査を実施するとともに、植物のヨシが浄化に効果があるといわれていることから、遊水池を設けてヨシの栽培も同時に行っている。
さらに、酪農学園大学には「農業後継者をどう育成 していくのか」を基本テーマに、当町の酪農家子弟の中学生を対象としたアンケート調査の実施と、その対 策を含めた検討をしていただいている。 いずれも、酪農の将来を見据えた対策の一手と考え られるし、大学も地域も共に考え、お互いに生き残りの道を探っている。


酪農部門以外での交流も検討したい
最初の取り組みは酪農学園大学酪農学科を主としてスタートしているが、本協定名は「地域総合交流」であり、現在の活動はまだ一部だと思っている。
この交流をきっかけとして今後、さらに酪農学園大 学との交流の場を広げていきたいと思っている。
浜中町はまさに第一次産業の町であり、観光・教育 も含めた交流、例えば食品加工(海産物・農畜産物)、 環境保全(農漁村地域)、観光産業(景観・体験農漁業)、 生涯学習(後継者育成・対策)などを含めた交流も考えられる。
今後、庁舎内に関係する各課(農林課・水産課・商 工観光課・教育委員会など)と産業団体(農協・漁協・ 商工会・観光協会など)からなる協議会を設置し、「将来にわたって酪農学園大学と各種交流ができないものか」の検討を重ねていきたい。
時間はかかるが、今回の協定を通じてできるものから交流活動を展開していきたいと考えている。そのためには、最初の取り組みである酪農部門での成果が大切だし、大いに期待しているところだ。

酪農ジャーナル 2006.1月号より




東に阿寒、西に大雪山、広大で豊な景観「足寄アル プス」に
放牧酪農で新規就農を目指す若者よ、集え

交流が新たな一歩に
足寄町には、多くの酪農学園大学の卒業生が活躍さ れています。
特に平成8年の放牧酪農研究会の活動がいろいろな方面で注目され、新規就農を呼び込み、若者が足寄町の「魅力」を再発見しています。
の「魅力」を再発見しています。 足寄の立地条件を生かした放牧酪農経営は大規模経 営にも劣らない経営収支を確保しており、多くの事例 を検証しながら、「環境に優しい」農業の確立を目指す ことにより、平成 16年6月に全国で初めて「放牧酪農 推進のまち」を町議会の全会一致で宣言させて頂きま した。
また、平成15年からは、「北海道放牧酪農ネットワーク交流会 in足寄」を開催し、放牧酪農の情報発信基地 として毎年開催し、6回目を迎えた今年も250名を超える参加がありました。
足寄町は「牧歌的」な農業が残っています。そんな中「酪農実践学コース」については、平成18年4月より受け入れを始めて今年で3年目となり、この短期間に地域酪農家、放牧グループとの交流を通じながら大学の趣旨が認知され足寄町と大学との農学連携が密接になるなど、双方にとって大変有意義なものになっていると考えます。


生きた学習の場
どんなに土地・気象条件が厳しい状況下にあっても人の英知と創意工夫の中から、科学的に調査・分析・ 研究し実践することで、豊かな農業経営ができると考 えます。
その一つの事例が、放牧酪農ではないでしょうか? 足寄町は、十勝の東北部に位置し、丘陵地帯で夏と冬の寒暖の差も著しく農業には向かない厳しい条件であります。
比較的土地条件の良い河川流域の地域では畑作経営が行われておりますが、丘陵地帯である中山間地域では牧草以外の作物は育たない寒冷な気象と、急傾斜地で、しかも様々な形の圃場が点在する丘陵地帯のため、畜産経営以外の農業は困難な地域といえます。
北海道の多くの酪農は、近代化された畜舎で牛を飼 い、輸入穀物を原料とした配合飼料を給与する経営で、 言い換えれば牛乳生産工場となっています。足寄町の 「風土」で育った放牧酪農は、牛という草食動物として本来備わっている能力を最大限に生かし、放牧することで排泄物も草地に還元でき「土地=草地=牛」を巡る循環農法であります。
ともすれば、学生の皆さんは教室で机に向かい、教科書的な勉強し、又は短い実習体験で、酪農の全てを理解したという錯覚に陥りがちです。
酪農は机上の理論だけでは成功しません、例えば「相撲の知識をいくら学んでも相撲が取れる訳ではありません」大切なことは実践を向上させる理論なのではないでしょうか?
同大学が行っている「酪農実践学コース」は、「理論」 と「実践(現場)」を結び付けた生きた学習の場であり、 皆さんの将来に必ず役立つ体験です。
学問ばかりではなく、「農業の大切さ」「素晴らしさ」 も学んでほしい。21世紀は「農業」の時代です。


農業の担い手に拍手
今、日本農業は崩壊寸前で、食料自給率は39%となっています。
この数値は 60%以上もの食べ物を国外に依存して いて、輸入食糧無しに国民の命を守れない国になっているという現実を深く受け止めて下さい。
安い農産物の輸入は、商社や外食産業を育てました が、一方では農村が疲弊し、貴重な農地も荒廃し、直には作物が育たない遊休農地が拡大しています。
このような状況下で、農産物の輸入に頼らざるを得 ないわが国にとって、近い将来、輸出相手国において干ばつ等の自然災害が万が一発生した場合、輸入停止措置などにより深刻な状況に陥ることも懸念されま す。
近年「食の安心・安全」が消費者から強く求められる、安心・安全な国産農産物への国民の期待や需要が高まりつつある中で、農産物の質はもちろんのこと農業者の底辺の拡大が求められており、農業が基幹産業である本町にとっても、農業における担い手確保は、今後益々重点的に取り組んで行かなければならないと考えております。
現在、本町では独自の農業担い手確保のための様々な支援を行っており、関係機関やグループ、放牧酪農 家等の協力により、実習や新規就農を希望する若者への技術習得に伴う実習期間、新規就農当初の負担軽減 を図る等を行っています。
念願でありました宿泊研修施設も平成21年4月から供用開始となり、この施設を中核とし更に担い手確保対策を促進する所存です。
今後、益々酪農学園大学との交流が発展し、自然豊かな就農環境の中で、農業を目指す多くの若者に期待するとともに、足寄町に集われることをお待ちしてお ります。



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