学科長挨拶


学類長

循環農学類長(旧:酪農学科長)

森田 茂


 
 

本学の使命のひとつである「有為な人材を農村へ送り出す」ため、本学では長年にわたり、「委託実習」 と称して酪農家に住み込んで行う3週間の実習を、必修科目としてカリキュラムの中に入れてきた。こ れは、現在多くの大学で取り入れている「インターンシップ」にあたる。これにより学生は、多彩で多 様で変化に富んだ現実に直面して、「学ぶ」意義を再確認した。数多くの学生が4年間の学生生活の中で 最も印象の強かったものとしてこの「委託実習」をあげるようにインパクトの強い実習であった。「研究 室はどこ? 担当の先生は誰?」、「卒業論文のテーマは何?」と同じように、「委託実習はどこで?」は、 同窓生同士の合言葉のように語られる。しかし、3週間では酪農家が行う年間を通じての作業や生活を 学ぶことは難しく、酪農産業を担うという意識に対応できるプログラムとしては十分とはいえないとい う課題も抱えていた。


また、現在、酪農技術は専門化・細分化しており、大学において現代的技術を個別に学ぶことは可能 であるが、実際に酪農家が行っている生業(なりわい)としての総合的・システム的な技術や、それを 支える考え方・視点を学ぶことは難しかった。学生の中には休学制度を利用して長期間の実習に取り組 んだ者もいた。酪農学科では、教育プログラムの改良や学生の就学意欲への対応のため、「実践酪農学コー ス」立ち上げに向け、3年5ヶ月にわたり検討を行った。そのなかで、この総合化された技術およびそ の視点で学ぶためには、座学だけではなく現場に身を置き、自ら課題を発見する機会を持つことが重要 であると考えた。しかも、教室での学びと現場での学びが交互にあることで、更に教育効果を高めるも のと考え、「実践酪農学コース」を企画した。検討には、ワーキング・グループ(教員6名)による打ち 合わせや、学科会議での検討は、それぞれ10数回にわたった。実践酪農コースが進行している現在では、 他の教育プログラムと同様、コース内容は日常的に検討されている。


十分な調査や検討を経て、「実践酪農学コース」は2004年度からスタートした。まず1年前期に実施 する「実践酪農学」で、現場の指導者や優れた酪農家による話題提供とその後のディスカッションによ り、新入生に現場の状況を認識してもらった。1年生の夏休み中の滝上町での予備実習は、当初想定し ていなかったが、数年の教育指導経験から生まれたサブプログラムであり、十分機能している。1年後 期に実施する「実践酪農学演習」では、次年度の農家研修に向け、受講者を限定した上で、実作業の目 的と意味を理解してもらう目的で、学科教員が中心となり実習にあたっている。そして、2年生の前期 には、浜中町、鹿追町および足寄町の協力農家にて、農家研修に取り組む。2005年度以降、これに参加 した学生数は39名である。


教育機関に在籍するものとして、学生の成長を見つめることは最高の喜びである。また、私たち教員 もこのプログラムにより、私たちの使命を再確認するとともに、それに向け確実に成長している。協力 農家や協力機関の皆様も、このプログラムより、多くのことを得ていただければ、三者が三様に努力し た成果が全てに伝わっていることになる。一方的教育だけでなく、それぞれが成長する姿を認め合う経 験が、現場を課題とする継続した学び、すなわち「実践酪農学」の誘いとなる。


このコースの実施に当たって、滝上町、浜中町、鹿追町および足寄町の協力農家および関係機関の皆 様には、多くの暖かいご支援やご指導いただいている。心からお礼申し上げるとともに、今後ともご協 力いただくことをお願いする次第である。

 

 

 



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