2004年度に始動した実践酪農学コースが5年の年月を経る。この試みは自己完結しがちな大学教育の限界を打ち破る為の挑戦であり、長期間におよぶ現場での教育を実学教育の一端を担う位置づけとした功績は大きい。これまで、24名学生がこのコースに参加し、酪農実践を学んだ。その多くの学生が「学」と「実践」の意味を、自己の経験を通して学んだ。また、酪農あるいは農業そのものを正面から捉える姿を、またその存在の価値を求め続ける姿を、彼らの報告書や報告会での言葉の中からくみ取る事ができる。すなわち、彼らはこの実践酪農学コースの中で、自ら学ぶ事(自己学習能力)を体得したのである。
「学」と「実践」を通して、自らが学ぶべき事柄を見つけ、学ぶ素材、学ぶ方法をも自らが設定する。そして得た答えが、さらなる学習への誘いとなる循環が成り立つ。物質循環だけではなく、人間形成においても知的循環が構築されなければならない。これが大学という教育機関の目指す究極の目標である。しかし、この営みは、わが国の高等教育に欠けている最も重要な要素で、長年指摘され続けてきた事も事実である。酪農学園大学における実践酪農学コースの試みは、こうした大学教育における本質的改革の要素を含むものであった。5年の歴史は実験的意味では成功したと見做すべきものである。これに参加した学生、多大の努力を惜しまず指導に当たった教職員、そして学生を受け入れて戴いた農家、農協、地域の方々に心から深い感謝の念を申し述べたい。
残された課題は、この試みで得られた成果を酪農学園大学の育に普遍化する事である。酪農学園大学に学ぶすべての学生が自己学習能力を身につける教育体制の確立へと繋げる事である。この目的を実現するためのさらなる挑戦として、文科省の「質の高い大学教育推進プログラム」に「酪農場での長期実習を組み込んだ新教育方式」を申請し採択された。これは酪農学園大学に学ぶ学生が自己学習能力を修得する為の支援事業であり、その成功は真の教育改革が現実のものとなる事を意味する。すなわち、実践酪農学コースの真価が問われることに他ならない。 |